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  • 執筆者の写真まつださえこ

誰のために整えるのか。

他装レッスンが盛んな季節に入ってきました。


他装は、お客様からお代をいただいて技術を提供する仕事につながっているので、何度も何度も繰り返しお伝えします。


「絶対にお客様の衣装を雑に扱わないこと。」


「どんなに焦る時も、衣装を跨いだり、腰紐を放り投げたりは論外。」


「肩にかけてさし上げた着物を自分の手から離す最後の瞬間まで、気を抜かない。バサッとかけない!」


そんなこと当たり前じゃない?

そんなことする人いる?

とおっしゃる方も多いと思いますが、これが意外と当たり前ではない現場は、残念ながらあります。

着付師のおしゃべり上手でどれほどお客様を気分良くさせても、どんなに着付けの腕が良くても、お預かりした衣装の扱いがぞんざいな方は未だ少なくない、と感じています。


それは、とても残念なことです。


道具を丁寧に扱う。

着物を美しく畳む。


こういった行為は、当たり前のようであって、それなのに軽く考えられがちで、しかも仕事としては実に重要な意義を含んでいます。


その意義とは、まず「信用を獲得する」ということです。

お客様は見ているのですよね。

気づくのですよね。

着付師に預けた着物が大事に扱われているか、雑にされているか。

そこで信用を得るか否かは、もはや着付師として以前に、人としてモラルを問われる話なのです。

着付けで喜んでいただくはずが、着付け以外の振る舞いで信頼を損ねる行動は、絶対に避けなければいけません。

私自身の過去の拙い経験も踏まえた上でも、お客様からお預かりした物は丁重に取り扱うよう徹底します。


そして次に、着付師として大事な話。

丁寧に徹した行動の中には、「場の空気を整える」力があります。

お客様からお受け取りした衣裳や小物類を順番に揃えていく準備段階は、着付師の頭の中を整理する段階でもあります。

自分の手で物を揃え整える行為を自分の目で確認していると、焦る気持ちや不安な気持ちも不思議とコントロールされていくものです。

そうすると、場の空気も自然と整っていきます。

というより、整ったように自分の心が感じるんですね。

行動は気持ちを整え、気持ちはその場の空気に連動します。その空気は、お客様にも伝わるものなのです。


だから、です。


着付師が現場に立つときは、自分のために丁寧な行動を追及してほしい。

誰のためでもなく、自分のためと思って、お客様の着物を整えてほしい。

はやる気持ちや不安な思いが、丁寧に振る舞うことによって自然と治まるからです。

その振る舞いが、結果としてお客様の満足感へ繋がっていけばいいわけです。


着物は丁寧に畳み、紐類は美しくコンパクトに並べ、それら全てを有効な場所にまとめ置く。


<丁寧さ>は自分の最高の防具であり、美しい武器であることを、まだそれとわからないうちから、木魚を叩くようにリズムよく延々と「丁寧に〜」「丁寧よ〜」とお伝えしています。


成人式まであと三ヶ月。

丁寧さの絶大な効力を侮ることなく、辛抱強く練習してほしいと願います。


夜の散歩。目指せ毎日10,000歩。目指せピンコロ。

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