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相手の機嫌を

  • 執筆者の写真: まつださえこ
    まつださえこ
  • 1月16日
  • 読了時間: 3分

とろうとしない。

うかがわない。


つまり、お客様の機嫌に同調しない。

共感はよくても、同調はタブーです。

着付け師の基本です。


たとえば、お客様が不機嫌そうな時。

体調が悪いのか機嫌が悪いのか、虫の居所が悪いとして、それが何に因ることなのか分かりもしないのに(私が何かしただろうか?)と不安に駆られ、機嫌をとろうと試みる。これが同調です。

たとえば、お客様のテンションが高く饒舌な時。

着付け師も一緒になっておしゃべりに夢中になる。心浮かれていく。はしゃぐ。これも同調です。


パーソナルスペースを侵して着付けという技術を提供する人は、お客様の機嫌の良し悪しに自分の心身を左右されてはいけません。お客様がどんな精神状態にあろうと、テンションが高かろうが低かろうが、自分への侵食を許さない。お客様の発する空気感に同調した瞬間から、技術提供は必ず不安定になります。練習ではしなかった不要なことを無意識にしたり、練習でできていたことをしなかったりして、本来発揮すべきパフォーマンスを欠いていく原因となります。


では、着付け師はどうあればいいのか。

みずからは常に中庸であり、ひたすらに心身静寂をもってことにあたること。

着付け師自身の心の安定とぶれない重心、落ち着きのある呼吸、そういった自分の心身の安定を着物とともにお客様へ着せていく。この感覚が何より重要です。


とはいえ、常に緊張感のある着付けの仕事。駆け出しの着付け師にとっては特に、心と呼吸を安定的にコントロールするのは難しいものです。熟練者も体調の浮き沈みとパフォーマンスを完全に切り分けるのは難しいでしょう。だからこそ、これから着物をお着せしていくお相手にすべきことは、饒舌に心地よい言葉でサービスすることではありません。機嫌をとろうとへりくだることでもありません。あなたの仕事はお客様のご機嫌をとったり、伺ったりすることではない。


すべきこと。それはまず、お客様に対して一礼。

緊張で浮き上がってくる心を腹の下、両足まで沈める。

それから今まで鍛錬してきた技術を今まで通りに実践できるよう努める。

言葉は常に丁寧に、尊敬を持って発すること。

お客様のお尋ねにはプロとして今ある知識を最大限に活用してお答えする。


不安も高揚もかなぐり捨てて、平常心で技を提供することに一心してください。そうすればお客様との時間は自ずと穏やかでより良いものになっていきます。

お客様に共感はしても同調は絶対にしない。着付け師の平心、静寂、中庸に同調してもらうのです。


 
 
 

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