「塩瀬の帯は、どう転んでも、やんわりと品のある顔つきをやめない。」
長らく感じてはいたけれど、腑に落ちて底にスコンと留まる思いで眺めていた塩瀬の帯姿。
上級コースも修了なさって、単発レッスンに通っていただいている生徒さんです。
「柔らかすぎて結びにくいし、シワシワするし、うまくいかないので練習します。」
と言ってお持ちになった名古屋帯は、生徒さんの上品な佇まいによく合う塩瀬の染め帯でした。
私がこれまでお伝えしてきた、四角い菓子箱のように整ったお太鼓結びの仕上がりでは、全体の印象がバラバラで、帯の良さが生かしきれなかったので、思い切ってお太鼓を大きく、下線もふんわりとさせて仕上げていただいています。
左:従来のお太鼓手順で仕上げた形
右:お太鼓部を大きく、下線をふんわりさせた形
塩瀬の滑らかな生地感に優しい柄付け。
とろんとした丸みのある、額縁のようなお太鼓のフォルム。
生徒さん曰く、
「これでいいのですね。上手くできないと思っていたので安心しました^^」
これでいいというより、これがいい。これもいい。安心してください。素敵な仕上がりです。
私が、この日本画然としたお太鼓姿を見て、「これもまた美しい」と感じるようになったのは、ここ数年のうちの話です。
日本舞踊の世界でお手伝いをするようになったことや、民藝や日本画を勉強し始めたことがきっかけといえば、そうかなと思います。
折り紙のように、直線と角に整えられたお太鼓が大好きだった私も、曲線に包まれたお太鼓を心底美しいと感じられるようになった。
その心の変化と成長で、生徒さんに差し出せるものがさらに増えたのであれば、まだまだ学ばずにはいられない。
そう思う日のレッスンでした^^
クラス感のある博多帯。
Comments