初めて、トルソーじゃない、人に着付けを施した回の生徒さんの感想。
「緊張で震えるし、息止めちゃうし、変な汗かきました。」
そうそう、それそれ。思い出した。それは、だいぶ忘れていた感覚。
私も初めての現場では、心臓がドキドキして、冷や汗かくほどに緊張したものです。
その昔、現場をご一緒していた同志の中には、手が震えている人もいらっしゃったり。
私は向こうみずが酷かった性分なので、その緊張を高揚感にすりかえて突っ走ったりして。馬鹿丸出しでした。そんなことを久々に思い出しつつ、あれからもう十数年経ちます。
本題。
他装は、お客様のパーソナルスペースに入り込んで、親密な距離感に自分を置かせていただくことから始まります。
しかも必要とあれば、着付師の手が、お相手の身体にそっと触れることもあります。
そんな密接空間に立つのだから、緊張も不快も、お互いの人となりまでも、体温を通して須く悟り合ってしまう。隠そうと誤魔化しても、心の在り様が必ずバレる、伝わる。
それが人間の動物的な所であって、パーソナルスペースに入り込むということは、そういうことと思います。
初めましての方にそこまで近づくなんて、普通の生活の中にはまず無いことですよね。なので、生徒さんの焦りもごもっとも。気持ちはよく分かります。
けれども、だからこそ。
普段から練習で安定した技術を身体に染み込ませておかないと、身体が緊張に先を越されて、本分を発揮できなくなります。
トルソーと人体は似ているようでいて、恐ろしく感触の違う個体ですが、トルソー着付けで目指すところを目指せていないと、人間の身体では分かりやすくグダグダになるんですね。
トルソーですんなりこなしてきた箇所は、人体でなんとなくな仕上がりになり、苦手な箇所は不毛地帯と化す。密接な距離感にいながら、技術を発揮することの難しさってやつです。
何もかも悟られそうな距離感にいて無事で帰りたかったら、今は必死で手に技を覚え込ませるしかない。
今回は、「人に着付けるってこういう感じなのか」を知る回なので、今のところ自分の手元しか、自分の着付けしか、自分しか見えていません。
そこから、着付けを通してその方を知りにいくところまでの道のり。正直、けっこー長いし、私だって道半ばですが、諦めて欲しくないなぁと常々思っています。
邪魔にならない場所を見計らって、踊っていたと思われる。
かわいい‼︎
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